相模原法人会にて講演
更新日時:
2021/06/18
カテゴリ:活動報告
カテゴリ:活動報告
相模原市が進めている行財政構造改革プランについて、お話しをさせていただきました。
市民の皆さんにご理解をいただき、この改革を前へ進めていき、未来の相模原を創造していきたいと思います。
(1)プラン策定の目的
行財政構造改革プランについて、ご説明いたします。
まず、はじめに、「相模原市行財政構造改革プラン」を策定した目的につきまして、経過も踏まえて説明させていただきます。
本市では、持続可能な財政運営の実現に向け、収支均衡を基本とした長期財政収支について、令和元年9月末時点における仮試算を行いましたところ、令和2年度から令和9年度までの間における歳出超過の累計額が約768億円に達する見込みとなりました。
その後、令和2年10月末時点で更新したところ、令和3年度から令和9年度までの間における歳出超過の累計額はさらに増えて、約816億円に達する見込みとなりました。
結果から見れば、財政運営において、これまで中長期的な見通しが甘く、財源の裏付けのない事業計画をいくつも抱え込んでいたと言わざるを得ない状況でございます。
いずれにしましても、こうした本市の長期的な財政収支の見通しや今後の人口動態等を考慮しますと、これまでと同様の行財政運営を続けた場合、持続可能な都市経営はおろか、いずれは真に必要な行政サービスの提供すら、困難になることが見込まれます。
このような状況を踏まえますと、歳入規模に応じ、行財政運営の構造を抜本的に改革し、また、こうした取組の必要性を市民の皆様や市議会等と共有し、ご理解、ご協力をいただく必要があることから、「相模原市行財政構造改革プラン」を策定することといたしました。
本改革プランで示そうとしているのは、いわゆる行政改革ではありません。本市の財政規模、財政構造等に応じて、事業費の縮減やスリム化を図ることは重要な要素ではありますが、それを主目的としたものではなく、その真の目的は、今後の人口減少と、著しく財政が硬直化している中にあっても、相模原市総合計画の基本構想で描く本市の将来像「潤いと活力に満ち 笑顔と希望があふれるまち さがみはら」を実現するために、持続可能な行財政基盤を築くことにあります。
(2)主な内容
次に、「行財政構造改革の基本的な考え方」をご説明したいと思いますが、まずは、その前提として、相模原市の財政構造について、お話しいたします。
相模原市の平成30年度普通会計決算における、市民一人当たりの市税収入額に対する市単独事業の扶助費(生活保護費や医療の給付費など)の割合は、指定都市の中で、最も高い額となっております。一方、普通建設事業費(学校や公園、道路など公共施設の建設費など)についてみると、市民一人当たりの費用は、指定都市中、最も低い額となっております。
市民一人当たり市税収入額に対する割合(平成30年度)
市単独事業の扶助費 普通建設事業費
1位 相模原市 16位 名古屋市
2位 熊本市 17位 大阪市
3位 横浜市 18位 広島市
4位 川崎市 19位 千葉市
5位 広島市 20位 相模原市
また、令和元年度普通会計決算における経常収支比率は99.8%となっています。「経常収支比率」は、家計に例えると、「毎月の給料が、食費や光熱水費、住宅ローン返済などの固定経費に、どの程度消費されているのか」を表す指標です。本市では、この割合が極めて高く、新たな行政需要や臨時の財政需要への対応力が極めて限定的となっている状況です。
・本市の経常収支比率の推移
平成27年度 98.0%
平成28年度 102.5%
平成29年度 98.4%
平成30年度 98.1%
令和元年度 99.8%
さらに、令和元年度末の市の貯金である財政調整基金の残高は約68億円となり、平成25年度末(約133億円)をピークに、平成28年度末に半分まで落ち込み、その後、基金残高を復元できずにおります。
・財政調整基金の年度末残高の推移(単位:億円)
平成27年度 111.2
平成28年度 69.3
平成29年度 62.4
平成30年度 73.4
令和元年度 68.0
こうした財政状況を踏まえた「行財政構造改革の基本的な考え方」についてですが、財政健全化の目標としましては、計画期間中に見込まれている累計約816億円の歳出超過を解消し、持続可能な財政運営に向けて、様々な行政課題に対応できる行財政構造の構築を図るとともに、将来の財政環境の変化に機動的・弾力的に対応できる財政基盤を確立してまいります。
また、経常収支比率につきましては、計画期間中に指定都市平均並みの数値に改善し、財政構造の弾力化を図ります。
(指定都市平均 令和元年度末 97.3%)
こうした状況を踏まえて、行財政構造改革に取り組んでいくに当たっての視点といたしましては、収支が均衡することを原則とした長期財政収支を作成し、それに沿った財政運営を行ってまいります。
具体的には、事業等の選択と集中を先送りせず行うことが必要と考えており、市が進めている事業につきまして、「有効性の観点」、「効率性の観点」及び「普遍性の観点」を基本的な基準として、実施する事業、実施しない事業を明確に決定してまいります。
一方で、厳しい財政状況下にあっても、老朽化する公共施設の長寿命化、防災・減災対策、災害復旧など、市民のくらしの安全・安心のための経費は適切に必要な額を確保いたします。
併せて、事業費の縮減やスリム化にとどまらず、財政運営上、「本市が特に重点的に力を入れる分野」及び「本市の個性を生かす取組」を明確に設定しまして、それらの分野等に可能な限り財源を確保してまいりたいと考えております。
さらに、こうした行財政構造改革を推進し、持続可能な相模原を実現させるためには、それを押し進める職員の意識改革も重要だと考えております。経営感覚やコスト意識を持ち、未来志向型で自律的に動ける職員の育成に力を注ぐとともに、昨年7月に策定した「組織運営の改善に向けた取組方針」に基づき、組織風土改革に強い意志をもって取り組んでまいります。
次に、「行財政構造改革プランの計画期間と取組内容」についてでございます。
本改革プラン全体の計画期間は、令和3年度から令和9年度末までの7年間としておりますが、新型コロナウイルス感染症収束後に本市が目指すべき姿等を踏まえる必要があることから、計画期間を「第1期」「第2期」に分けて策定しております。
令和3年度から令和5年度までの第1期では、新たなまちづくり事業等の選択と集中、既存の公共施設等の見直し、実施可能な改革項目の先行着手、政策決定プロセスの見直し、職員の意識改革、働き方改革等の取組を実施します。
併せて、第2期における抜本的な改革に向けまして、民間の知見も参考に、新型コロナウイルス感染症が本市行財政に与えた影響の分析及びアフターコロナにおいて本市が目指すべき姿や、「本市が特に重点的に力を入れる分野」及び「本市の個性を生かす取組」などについて、検討・意思決定を行ってまいります。
第2期については、令和6年度から令和9年度までとして、「持続可能な行財政構造の構築」に向け、「第1期」中に検討・意思決定を行った抜本的な改革内容の実施や、令和9年度中に、計画期間中における行財政構造改革の取組実績を検証し、令和10年度以降の取組継続の必要性について判断してまいります。
次に具体的な改革項目についてご説明します。
第1期中に行う歳出削減策としては、
・新たなまちづくり事業等の選択と集中
・既存の公共施設等の見直し
・事務事業の選択と集中
・外郭団体の経営改革
が、挙げられます。
歳入確保策としては、
・市税収入等の確保対策
・特定財源の積極的な確保
・地方交付税等の確保
・未利用市有地の売却・有効活用
などに取り組んでまいります。
(3)今後の取組(市民との対話について)
さて、ここまで、行財政構造改革ブランの「目的」「考え方」「計画期間と取組内容」をお話ししてまいりましたが、今後、取組を着実に進めて行くに当たりましては、時に痛みを伴う改革プランの必要性や取組の内容、改革の先にある本市の将来について、私が自らの言葉で市民の皆様にお伝えすることが何より重要だと考えており、新型コロナウイルス感染症の感染状況を見極めながら説明会を開催したいと考えております。
また、「第2期」から実施する抜本的な改革に向けた検討・意思決定といった取組の中では、市民の皆様と十分に対話を行い、ご意見を伺ってまいります。
先程も申し上げましたが、行財政構造改革は、続可能な行財政構造を構築するための手段であり、決して、それ自体が目的ではありません。次世代を担う子どもたちが笑顔で暮らせる市政を実現するという真の目的に向け、市民の皆様としっかりと、丁寧に、対話を行い、ご理解とご協力を得て、この改革を成し遂げていきたいと考えております。